最新の厚生労働省によるうつ病統計を知りたい読者に向けて、2022年から2023年にかけての患者数の推移や、精神疾患の患者数最新の全体像を整理します。
さらに、令和5年の患者調査の結果を踏まえた日本の推移や国際的な位置づけ、うつ病患者の統計の見方、世界一うつ病が多い国はどこかという疑問にも触れます。あわせて、うつの要因や仕事のストレスとの関係、対処方法や治療法についても客観的に解説します。
- 令和5年患者調査に基づく最新動向の理解
- 日本の推移と国際比較から見える特徴
- うつの要因と仕事のストレスの関係
- 科学的根拠にもとづく対処と治療の整理
最新の厚生労働省によるうつ病統計の概要

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- 2022~2023年の患者数・推移から見る変化
- 最新の精神疾患・患者数の全体像
- 令和5年の患者調査が示す動向
- 日本の推移と国際的な比較
- うつ病患者の統計に基づく課題
- 世界一うつ病が多い国はどこか
2022~2023年の患者数・推移から見る変化

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精神保健分野の統計を正しく読み解くには、まず調査設計の前提と発表年次の違いを押さえておく必要があります。厚生労働省の患者調査は全国の医療機関を対象とする標本調査で、3年ごとに実施されると説明されています。直近では令和2年(2020年)と令和5年(2023年)の結果が利用可能で、暦年の2022年単年に対応する同一スキームの公的調査は存在しません。
そのため、現状の「最新比較」は令和2年と令和5年の差分を丁寧に確認するアプローチが現実的と考えられています。数値面では、総患者数の概数が令和2年の約614.8万人から令和5年の約603.0万人に整理され、外来は約586.1万人から約576.4万人、入院は約28.8万人から約26.6万人に整理されています。ここで重要なのは、単純な増減の印象だけで解釈を進めないことです。調査のサンプリング誤差、医療機関の回答構成の変化、社会情勢による受診行動の揺らぎなど、観測の背景にある構造的な要因を踏まえたうえで読む姿勢が求められます。
とりわけ留意したいのが、推計手法の見直しです。令和2年調査から、外来患者数の推計で用いる平均診療間隔の算定に関し、前回診療日から調査日までの算入上限が変更されたと周知されています。平成29年までは31日を超えるケースを除外して算定していましたが、令和2年では99日以上を除外して算定する形に見直されたと説明されており、この前提の違いが外来の推移に与える影響を無視できません。
見かけの「急増・急減」の背景に、定義や算出ルールの改訂が紛れ込むことは統計では珍しくないため、年次比較では必ず脚注や注記を確認し、同一の定義で比較しているかを検証することが推奨されます。さらに、令和5年結果は過去調査との連続性を意識しつつも、疾病分類の読み替えや受療行動の変化(オンライン診療の普及、受診控えの揺り戻し等)といった文脈を加味して解釈することが重要だとされています。
推計方法の変更に注意:令和2年から外来推計の平均診療間隔の算入上限が見直された説明があります。年次比較では「数値の差」だけでなく「定義・算出ルールの差」を必ず確認する前提が示されています。
要点:令和2年と令和5年の比較は「水準」「構成」「前提条件」をセットで検証することが望ましいと整理されています。
患者調査ベースの最新推移(精神疾患全体・概数)
年 | 総患者数(万人) | 外来(万人) | 入院(万人) | 出典 |
---|---|---|---|---|
令和2年 | 約614.8 | 約586.1 | 約28.8 | 厚生労働省 患者調査(令和2年) |
令和5年 | 約603.0 | 約576.4 | 約26.6 | 厚生労働省 患者調査(令和5年) |
数値は公式資料に基づく概数の整理です。読解時は注記・脚注を併せて確認することが推奨されています。
一次情報としては、厚生労働省が公表する令和5年患者調査の概況が最も包括的です。統計表・注記・用語の定義がまとまっており、長期比較や傷病分類別の読み下しに有用とされています(出典:厚生労働省「患者調査 令和5年 概況」)。
最新の精神疾患・患者数の全体像

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最新の整理では、精神疾患を有する総患者数が概ね600万人規模で推移していると示され、外来が母集団の大半を占める構造が続いていると説明されています。
分類別にみると、外来では気分(感情)障害、神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害、その他の精神および行動の障害の順で多いという並びが示されています。入院は統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害の比重が相対的に高い一方で、長期的には減少傾向が確認されているとされています。これらは、外来中心の治療・支援体制が拡充してきたこと、地域生活を前提とした支援への政策転換が進んできたことなどの文脈と整合的と捉えられています。
総患者数の読み方としては、第一に「受療患者のストック(ある時点の受診者数)」を見ている点に注意が必要です。患者調査は受療状況の断面を推計する性格が強く、発症率(一定期間内に新たに発症した割合)や有病率(一定期間に罹患している割合)とは概念が異なります。
第二に、外来は通院頻度の差が受療者数の推計に影響しやすい点が指摘されます。診療間隔の分布が広がると、同一の有病率でも「ある調査日」に観測される受療者の見え方が変化し得るためです。
第三に、分類横断の重なりに目配りが必要です。例えば、うつ病と不安症の併存、身体症状とストレス反応の交錯など、実臨床では症状が単一分類に収まり切らない場合も少なくないとされ、集計上の分類と臨床像の複雑さを峻別して読む姿勢が求められます。
外来が多数を占めることは、ケアの主戦場が地域・外来にあることを示唆します。具体的には、初期評価、治療方針の合意形成、薬物療法や心理療法(認知行動療法・対人関係療法など)の実践、生活リズム・睡眠衛生・社会的リズムの調整、職場や学校との連携といった要素が、通院を軸に積み上がる構造です。外来の人員配置や地域の相談窓口、リファーラル(専門機関への繋ぎ)の機能性が全体のアウトカムに影響しうるため、統計の「外来中心」という特徴は実装面の論点に直結します。
入院は、急性増悪への集中的対応や身体合併症の管理、安全確保と社会復帰準備を含む包括ケアの場として位置づけられており、平均在院日数の短縮と地域移行を両立させる視点が重視されています。
また、人口高齢化の進行は受療構造に影響します。高齢層では認知症(アルツハイマー病、血管性等)の受療が外来・入院ともに存在感を持ち、若年〜中年層では気分障害や不安症群の外来受療が主役となる傾向が示されています。年齢階級別の分布は医療提供体制の設計(外来の曜日・時間帯、訪問診療・訪問看護の配置、介護・福祉との協働設計)に反映すべき基礎データであり、地域差も踏まえた最適化が必要と考えられています。
加えて、災害、感染症流行、経済環境の変動といったマクロショックは受療行動に波及し得るため、単年の動きを中長期トレンドと取り違えないよう、連続する複数回調査の流れで評価する読み方が推奨されます。
用語メモ:有病率(一定期間に病気を有している人の割合)と受療率(医療機関で治療を受けている人の割合)は別概念です。受療率は受診行動の影響を受けるため、医療アクセスの変化や診療間隔の分布が数値に反映されやすいと説明されています。
令和5年の患者調査が示す動向

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令和5年の整理では、精神病床における入院患者数がおよそ25万人規模で、在院期間1年以上の患者が約6割を占めるとされています。一方で、5年以上の超長期入院は近年明確に縮小していると示され、長期在院の構造的課題に対し、退院支援の強化や地域資源の拡充が一定の効果を挙げつつあることがうかがえます。
退院後の行き先に関しては、1年未満で退院したケースでは家庭への復帰が相対的に多く、1年以上の長期入院を経たケースでは他院入院や「その他(死亡・不明等)」の割合が高くなる傾向が示されています。これは、医療・福祉・介護・住まい・就労・地域支援の連携が退院後の持続可能性に直結することを再確認させる材料といえます。
在院期間分布の変化は、病床機能の見直しや地域完結型のケアへの転換と連動しています。急性期対応の迅速化、身体合併症マネジメントの標準化、合意形成(アドバンス・ケア・プランニングを含む)や家族支援の充実、地域側の受け皿(訪問看護、地域移行支援、共同住居、就労アセスメント等)の容量拡大が、平均在院日数と再入院率の双方に作用するためです。
統計の読み解きでは、単純な「在院日数の短縮=良い」ではなく、退院後の生活の質、地域での維持可能性、急性増悪時の再アクセスのしやすさなど、アウトカム指標を合わせて評価する視点が求められています。
また、外来主導での包括ケアは、危機的状況へのアクセス(精神科救急、時間外診療、往診体制)と表裏一体です。令和5年の状況整理では、精神科医療機関が自院の提供機能(入院・外来)を明確化し、都道府県の精神科救急体制と連携すること、日常の診療の中で危機時の対応方針(連絡先・時間外対応・同意取得の方法等)を事前に合意しておくことの重要性が強調されています。
さらに、身体疾患との併存に備え、かかりつけ精神科医と非精神科のかかりつけ医の連携、医療従事者の精神疾患対応スキル向上の研修など、医療横断の協働も論点となっています。長期在院の縮減には、こうした外来・救急・地域資源の総合的な整備が不可欠だと位置づけられています。
退院後の行き先(令和5年)の整理では、家庭復帰を支える地域の受け皿(訪問看護、居住支援、就労支援、家族教育等)が結果に影響しやすいことが示唆されています。退院支援計画の策定と多職種カンファレンスの活用が橋渡しの要になります。
日本の推移と国際的な比較

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日本の精神保健医療を語る際、国内の推移だけでなく国際的な比較を行うことは不可欠です。特に日本は、歴史的に精神病床を多数保有してきた国であり、世界的に見ても病床数が多いという特徴があります。
OECDの統計によると、2021年時点で日本の全病床数は人口1,000人当たり12.6床とされ、加盟国平均を大きく上回っています(出典:OECD「Health at a Glance 2023」)。この背景には、1960年代以降に整備された大規模精神病院の存在があり、長期入院を前提とした医療体制が長らく続いてきました。
一方、欧米諸国では1980年代以降、脱施設化(deinstitutionalization)と呼ばれる流れが加速し、入院医療から地域生活への移行が急速に進みました。その結果、多くの国では精神病床数が大幅に削減され、在宅ケアや地域精神保健サービスが中心となっています。日本も同様の方向性を掲げているものの、移行のスピードは比較的緩やかであり、現在も入院医療が大きな比重を占めています。
国際比較の注意点:精神病床数の国際比較には、各国で「精神病床」とされる定義の違いや、調査対象年次の差が影響します。例えば、急性期病床に精神疾患患者が含まれるか否か、長期療養施設を医療機関として扱うかどうかなどが国によって異なります。そのため、数値だけをもって単純な優劣を論じることは避けるべきだと指摘されています。
国内推移に注目すると、日本は近年、長期入院患者数の減少が顕著になってきました。患者調査の結果でも、5年以上の長期入院者は減少傾向を示しており、これは地域移行の取り組みが一定の成果を挙げていることを意味しています。ただし、退院者が地域で十分に暮らしていける環境が整備されているかという点については、依然として課題が残っています。特に、精神疾患を抱える人々の住居確保や就労支援は、国際的に見ても遅れが指摘される分野です。
国際比較を行うことで、日本の特徴はより明確になります。例えば、イギリスや北欧諸国では、精神医療の主流が地域拠点型の支援サービスに移行しており、病床数も大幅に削減されています。
これに対し、日本は依然として病床依存度が高く、医療から福祉・地域支援への橋渡しが課題となっています。政策的には「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」が打ち出されており、今後は国際水準に近づける努力が求められるといえるでしょう。
うつ病患者の統計に基づく課題

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うつ病に関する統計は、医療提供体制や社会政策の方向性を検討する際に不可欠なデータです。
厚生労働省の資料によれば、日本の精神疾患全体の患者数は約603万人で、その中でもうつ病を含む気分障害の患者が大きな割合を占めています。特に外来中心の治療が多く、うつ病は慢性化や再発リスクが高いため、継続的な支援体制が欠かせません。
統計から浮かび上がる課題として、以下のようなポイントが挙げられます。
- 外来中心の支援強化:うつ病は主に外来治療で対応されるため、外来医療の質やアクセスを改善する必要があります。
- 長期入院の縮減と地域移行:慢性化した患者が地域で生活を継続できるよう、住宅支援や就労支援の体制を強化することが求められます。
- 早期発見・早期対応:学校や職場におけるメンタルヘルス教育やスクリーニング体制が、早期介入を可能にします。
- 差別や偏見の低減:社会全体の理解を深める普及啓発活動が不可欠であり、偏見は受診や支援利用の障壁となることが指摘されています。
また、治療に関する選択肢も拡大しており、心理療法や薬物療法のほか、地域支援や社会参加を促すプログラムが注目されています。特に認知行動療法や対人関係療法は、エビデンスに基づいた効果的な治療法として位置づけられています。ただし、これらの治療は専門家による提供が必要であり、地域格差や人材不足といった課題が依然として残されています。
うつ病患者の統計から導かれる最大の課題は、医療と福祉の連携を強化し、患者が社会の中で安心して生活できる環境を整えることにあります。これは、単なる医療の問題ではなく、社会全体で取り組むべき包括的課題だといえるでしょう。
世界一うつ病が多い国はどこか

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「世界一うつ病が多い国はどこか」という問いは、多くの人の関心を引きます。しかし、実際には単純に国別で順位をつけることはできません。理由の一つは、国ごとに診断基準や調査方法が異なり、文化的背景によっても報告率が大きく変わるためです。
例えば、WHO(世界保健機関)は「うつ病は世界中で成人の数%が罹患している」と推定していますが、同じデータを国ごとに並べて比較することは、必ずしも公平な評価につながらないとされています(出典:WHO Depressive disorder)。
また、IHME(ワシントン大学保健指標評価研究所)が主導する「Global Burden of Disease(GBD研究)」のデータでは、WHOの推計とは異なる数値が示される場合があります。これは、サンプル規模や算出モデル、対象年次の違いによるものです。Our World in Dataでも、この2つの推定値の差異について詳しく解説されており、統計の限界を理解することの重要性が指摘されています。
さらに、文化的背景も大きな要因です。例えば、精神疾患に対する偏見が強い国では、患者が医療機関を受診しにくく、公式統計に表れにくい傾向があります。逆に、メンタルヘルスケアの普及が進んでいる国では、診断を受けやすいため患者数が多く見えることがあります。このように、数字の背後には医療制度や社会の受容度といった文脈が深く関わっているのです。
重要な視点:国別の患者数を単純に比較するよりも、各国がどのような支援体制を構築し、患者が適切にケアへアクセスできているかを注視することが、実態を理解する上で有効だといえます。
結論として、「世界一うつ病が多い国」を断定することはできません。むしろ、国際比較は各国の取り組みの違いや支援制度の特徴を知るための手がかりとして活用することが推奨されます。
最新の厚生労働省によるうつ病統計から考える

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- うつの要因と生活環境の関わり
- 仕事のストレスとの関係に注目
- 対処方法や治療法の最新情報
- 地域支援と社会参加の重要性
- 最新の厚生労働省によるうつ病統計から導くまとめ
うつの要因と生活環境の関わり

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うつ病は一つの原因によって発症するわけではなく、生物学的要因、心理的要因、社会的要因が複合的に作用するとされています。厚生労働省やWHOの解説では、以下のような要因が代表的です。
- 生物学的要因:遺伝的な素因や、神経伝達物質(セロトニンやドーパミンなど)の不均衡が関与するとされています。
- 心理的要因:物事を悲観的に解釈する思考の偏り、ストレス対処スキルの不足などが影響します。
- 社会的要因:失業や経済的困難、家族関係の悪化、災害や喪失体験などの環境要因が挙げられます。
これらの要因が単独で作用するのではなく、複数が重なり合うことでうつ病を引き起こしたり、症状を悪化させたりすると説明されています。たとえば、遺伝的素因を持つ人が、職場で過度なストレスを受けたり、重要な人間関係を喪失した場合に、発症リスクが高まることがあります。
用語解説:認知行動療法(CBT)は、うつ病の治療に用いられる代表的な心理療法です。患者が抱く「自分は価値がない」「必ず失敗する」といった自動思考を整理し、現実的で柔軟な考え方に修正する練習を行います。これは専門家によるプログラムとして提供され、日常生活での記録や課題を通じて習得していくことが特徴です。
生活環境との関わりも大きなポイントです。住宅の安定や職場の理解、地域コミュニティからの支援は、うつ病の予防や回復に大きく寄与します。逆に、孤立や経済的困窮は症状を悪化させるリスクとなります。そのため、うつ病へのアプローチは医療だけでなく、社会的支援の充実も不可欠だと考えられています。
仕事のストレスとの関係に注目

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日本では、働く人の精神的健康に関する問題が長年注目されてきました。厚生労働省の「こころの耳」では、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害に対する労災補償件数を毎年公表しています。
統計によると、長時間労働や職場での人間関係のトラブルは主要な要因とされており、特に過重労働と睡眠不足はうつ病発症のリスクを高めるとされています(出典:厚生労働省 こころの耳 統計)。
また、産業保健領域の学術レビューでは、長時間労働が続くことで睡眠の質が低下し、それがうつ病や不安障害の発症リスクを高めることが繰り返し報告されています。職場での過重な要求や裁量の欠如、ハラスメントといった要因も強い関連があるとされています。
働く人が実践できる初期対応:
- 業務量の調整や上司への相談による負担軽減
- 十分な休養や睡眠を確保すること
- 同僚や産業医など、職場内外のサポートを早期に利用すること
- ハラスメント対策窓口など職場の仕組みを理解しておくこと
- 必要に応じて医療機関を受診すること
職場のストレス要因は、個人の努力だけでは解決できない場合が多いため、組織的な取り組みが欠かせません。企業はメンタルヘルス対策を安全衛生管理の一環として実施する責任があり、ストレスチェック制度や相談窓口の整備が求められています。こうした取り組みが働く人々の心身の健康を守り、労働生産性の維持にもつながるとされています。
対処方法や治療法の最新情報

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うつ病の治療については、厚生労働省やWHOといった公的機関が提示する公式情報をもとに整理すると、心理療法と薬物療法、生活習慣の改善を組み合わせた包括的なアプローチが基本とされています。
特に、軽症から中等症の場合は心理療法を中心に、症状が重度の場合は薬物療法を組み合わせる形で実施されることが多いと説明されています(出典:厚生労働省 eJIM 公式ページ)。
心理療法の中で最も広く用いられているのは認知行動療法(CBT)です。これは「物事を悲観的に捉える思考パターン」を修正することを目的とした構造化プログラムで、専門家の指導のもと、日常生活の出来事を記録し、自動思考を再評価していく手法です。もう一つの代表的な心理療法である対人関係療法(IPT)は、人間関係の課題を整理し、対処スキルを身につけることで症状改善を図るものとされています。
薬物療法では、抗うつ薬(SSRIやSNRIなど)が中心となります。これらの薬は脳内の神経伝達物質のバランスを整える作用があり、効果が現れるまでに数週間かかるとされています。重要なのは、症状が改善したように見えても自己判断で中断せず、医師の指示に従って継続することです。突然の中止は離脱症状や再発のリスクを高める可能性があるため、医療者の慎重な判断が不可欠です。
治療・支援 | 概要 | 公式参照 |
---|---|---|
認知行動療法(CBT) | 思考・行動の癖を修正する心理療法。専門家の指導で実施される。 | 厚生労働省 eJIM |
薬物療法 | 抗うつ薬を用いて脳内物質のバランスを調整。効果発現には時間が必要。 | こころの耳 うつ病の治療 |
併用支援 | 睡眠・運動・栄養・社会的サポートを組み合わせた包括的支援。 | WHO Fact Sheet |
注意点:治療法の選択は症状の程度や既往歴、合併疾患、服薬歴によって大きく異なるため、必ず医療者による個別判断が必要です。インターネットの情報はあくまで参考にとどめ、診断や治療の意思決定は専門家の指導のもとで行うべきとされています。
さらに最近では、デジタル技術を活用したオンラインCBTや、スマートフォンアプリを用いたセルフモニタリング支援の導入も進められています。これらは対面での治療を補完し、継続的な治療のサポートとして期待されている分野です。
地域支援と社会参加の重要性

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うつ病を含む精神疾患の課題解決には、医療だけでなく地域社会全体の支援が不可欠とされています。厚生労働省が推進する「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」は、医療・福祉・住まい・就労・教育といった生活全般を包括的に支える仕組みです。
この枠組みでは、市町村や保健所、精神保健福祉センター、病院や診療所などの医療機関に加え、当事者や家族、ピアサポーター(同じ経験を持つ支援者)が連携して支援を行うことが想定されています(出典:厚生労働省 精神障害にも対応した地域包括ケアシステム)。
この仕組みの大きな目的は、長期入院を減らし、地域での生活を維持できるようにすることです。過去の日本は世界的に見ても精神病床が多い国でしたが、政策的な努力により入院から地域生活への移行が進められています。特に、居住支援と就労支援を両輪で進めることは、社会参加を促し、再発予防にも寄与すると説明されています。
地域支援で重視される視点
- かかりつけ精神科医や訪問支援チームによる迅速な対応
- 精神科救急や緊急時の支援体制の整備
- 安定した住まいの確保と職業リハビリテーション
- 地域での普及啓発活動による偏見の低減
さらに、地域の支援体制には家族やコミュニティの理解と協力も欠かせません。特にピアサポーターの役割は大きく、同じ経験を持つ立場からの共感的な支援は、当事者に安心感をもたらし、孤立を防ぐ効果が期待されています。
【最新の厚生労働省によるうつ病統計】から導くまとめ
- 令和5年の精神疾患患者数は約603万人と報告されている
- 外来患者は約576万人で入院患者は約27万人にとどまる
- 令和2年との比較には推計方法変更の影響を考慮する必要がある
- 患者調査は3年ごとで単年統計は存在しない点に注意が必要
- 外来では気分障害や神経症性障害の割合が高いとされる
- 入院では統合失調症関連が多いが減少傾向が見られる
- 精神病床の長期入院は減少傾向だが依然として課題が残る
- 国際比較は定義や調査方法の違いがあり単純比較は困難である
- WHO推計では世界全体で成人の数%がうつ病に罹患している
- うつの要因は遺伝や心理的ストレスなど複合的とされている
- 仕事の強いストレスや睡眠不足が発症リスクを高めるとされる
- 治療は心理療法と薬物療法を組み合わせて行われることが多い
- 治療は必ず医療者の判断で進める必要があるとされている
- 地域包括ケアは住まい就労医療を統合的に支える仕組みである
- 普及啓発活動は差別偏見を減らし早期受診を促す効果が期待される